
サムスン電子総合技術院は2020年10月20日、業界最高水準の青色自発光QLED(Quantum Dot LED)を開発したと発表した。2019年に赤色自発光QLEDの理論効率と高い信頼性を証明したのに続く実績で、QLED三原色(赤、青、緑)の中で最も実装するのが難しい青色の技術まで確保したことになる。開発の成果は同月14日に、既に世界的な学術誌「ネイチャー(Nature)」に掲載されている。
開発した技術では、発光効率を理論効率レベルの20.2%まで引き上げた。自発光QLEDは目で見ることができるすべての光の領域において純粋で鮮やかな光を表現することが可能なのが特長の一つだ。自ら光を出すため活用の幅が広いディスプレイ技術と言われている。最大輝度88,900ニット、素子駆動時間1万6,000時間以上(輝度100ニット半減寿命基準)。
サムスン電子総合技術院のキム・テヒョン専門研究員(第1著者)は、青色が自発光QLED三原色の中で最も実装するのが難しい理由について、「 量子ドットは、肉眼で見ることができないナノサイズだ。つまり髪の毛1本を数万分の1で割っただけの小さな超微細半導体粒子となる。量子ドットは、光を受けると、粒子サイズと組成に応じて異なる色を作成することができる。三原色のうち、エネルギーバンドギャップが最大量子ドットで作成された青色は、外部の酸素や光に弱く不安定だ。そのため、効率的な構造を設計しにくく、寿命が短い。このような困難のために、業界では、自発光QLEDに合った最適な青色材料さえ見つからない状態だった。」と説明した。

サムスン電子総合技術院の研究グループが、今回の成果を出した2019年11月の自発光QLED赤素材を確保できたことが大きな助けになったという。キム・テヒョン専門研究員は、「最初に青色量子ドットを研究する際に、赤と緑の量子ドットに使用されるプリントインジウム(InP)材料を使用したが、青色発光も難しく特性が良くなかった」とし、 「効率と安定性を確保することができるジンクセレン化(ZnSe)ベースの物質に変えて、青色の開発に集中した」と説明。「既存のプリントインジウム(InP)の合成と赤自発光QLEDを開発した経験のおかげで、比較的短い時間で新しい物質を活用して優れた特性を得ることができたようだ」とも話した。

量子ドットは、基本的に「コア(Core)+シェル(Shell)+リガンド(Ligand)」の構造で構成されている。コアが発光を担当する場合は、シェルは、発光効率と寿命を高めためにコアを包んでいる部分である。最も外側に存在するリガンドは、ナノ粒子が固まらずに距離を維持し、光をよく出すことができるように助ける。
青色自発光QLED素子構造(電極>正孔注入層>量子ドット発光層>電子注入層>電極層から成り立つ)コントムダト発光層を拡大してみると、青色量子ドット二重発光層の構造が見られる。 シェルとコアで構成されている構造にリガンドが伸び出てくる構造だ。
研究者は、量子ドット材料の安定性を向上させ、光反応の耐久性を確保するために力を注いだ。青色量子ドットの効率が理論的に確保されるよう欠陥を除去したことに加えて、青色の粒子表面のリガンドの電流注入を改善するために、長さが短い無機系イオンで置換した量子ドットを二重発光層構造に適用した。これにより、青色自発光QLED素子の発光効率を理論的限界レベルまで引き上げることができた。

サムスン電子が自発光QLED青色素材を開発したことで、量子ドット技術を活用した次世代ディスプレイの開発は更に活発化する見通しだ。ジャン・ウンジュ(장은주)フェローは、「自発光QLEDに適用可能な青色素材を発掘し、素子レベルで業界最高レベルの性能を実証したのが、今回の研究成果の大きな意味」と述べた。「サムスン独自の量子ドット技術で再び技術的な限界を克服したことで、自発光QLEDの商用化速度が加速することに期待している」とも話している。
(文/コリアコリア編集部、写真/サムスン電子広報資料より)