長年の後継人事に終止符、現代自が長男の鄭義宣氏を新会長に任命

現代自動車グループは2020年10月14日、就任20年目を迎えた鄭夢九(チョン・モング)会長に代わり、鄭義宣(チョン・ウィソン)首席副会長を会長に選任したと発表した。鄭夢九会長が新会長人事を指示し、臨時理事会(取締役会)で決定した。鄭義宣氏は、鄭夢九会長の息子で、創業者である鄭周永氏の孫に当たる。

鄭義宣氏は、1994年に現代精工(現在の現代モービス)入社。その後、2005年に業績不振に直面した起亜自動車の社長を務め、車両デザインの改革などを実施し高い評価を得た。2008年のリーマンショック後、現代自動車の副会長を務め、危機を乗り切った実績などがある。2010年代に現代・起亜自が世界市場における拡販に成功した一役を担った。2018年9月から現職の首席副会長に就き、実質的な経営トップとなっていた。

現代自では、高齢の鄭夢九会長(1938年、82歳)の後継人事の行方に注目が集まっていた。韓国では、財閥の世襲を批判する声が高く、鄭義宣首席副会長の会長就任が確実ではなかったためである。名実ともに評判の高かった同主席副会長の会長就任が決まったことにより、大きな混乱はなく、自動車業界から不安要素が一つ消えた。新会長の就任が決まり、現代自はコロナ禍による不況からの事業立て直しに本腰を入れるとみられる。

巨大財閥が経営権を子供に譲るという家族経営には賛否両論ある。迅速な意思決定が行える一方、政界との癒着など悪い噂も後を絶たない。大学進学や就職難などに苦しむ学生が多い韓国では、親から巨大財閥を引き継ぐ世襲制を不平等とみる声が大きい。韓進グループは、傘下の大韓航空の趙顕娥(チョ・ヒョナ)元副社長によるナッツリターン事件や、母親の李明姫(イ・ミョンヒ)氏や次女の趙顕旼(チョ・ヒョンミン)前専務によるパワハラ問題も記憶に新しい。朴槿恵(パク・クネ)前大統領への贈賄罪に問われたサムスン電子トップの李在鎔(イ・ジェヨン)副会長は2020年5月に経営権の世襲を自分の代で終わらせると発表した。世襲制そのものが限界に達しているとの見方も出ている。

世襲による経営権取得は賛否両論あるものの、企業ごとに経営体質やその実態は大きく異なる。韓国の巨大財閥が直面する世襲制に対する批判を、現代自の鄭義宣新会長は覆すことができるだろうか。これまでの実績に対する評価が高いだけに、韓国国民が同氏の経営手腕に注目している。

(文/コリアコリア編集部、ロゴ/現代自動車広報資料より)

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