超高感度マイクロ波検出器を開発、浦項工科大研究チーム

サムスン電子は2020年10月4日、研究開発を支援している浦項工科大学(Pohang University of Science and Technology)のイ・ギルホ(이길호 )教授率いる研究チームが、超高感度マイクロ波検出器を開発したと発表した。マイクロ波について、理論限界である1秒間測定基準1アトワット(aW:100京分の1ワット)レベルで検出可能な超高感度検出器となる。同研究は、米国Raytheon BBN Technologies、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、スペインのバルセロナ科学技術研究所、日本の国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)と共同で手掛けた。

マイクロ波は、量子コンピューティング、量子情報通信などの量子情報技術にも活用可能であると知られ、超高感度で検出する研究開発が活発的だ。電磁波の一種で、電子レンジで使用されている他、移動通信、レーダー、天文学などの幅広い科学技術の分野で活用されている。

現在、マイクロ波検出器として使用されるボロメータは、マイクロ波の吸収素材、吸収したマイクロ波を熱に変えてくれる素材、発生した熱を電気抵抗に変換する素材で構成されており、電気的な抵抗の変化を利用して吸収されたマイクロ波の強度を計算している。一方で、ボロメータは、シリコンやガリウム砒素などの半導体素子をマイクロ波吸収素材として使用するため、検出限界が1秒間測定基準1ナノワット(10億分の1ワット)のレベルに留まるなど、精密な測定が不可能なことが課題となっていた。

研究チームは、ボロメータの素材と構造技術の革新を通じてこの限界を突破したという。マイクロ波吸収素材について、半導体ではなく、グラフェンを使ってマイクロ波の吸収率を高めた。そして二つの超伝導体の間にグラフェンを入れる「ジョセフソン接合構造」を導入して、グラフェンで発生する電気抵抗の変化を10ピコ秒(1,000億分の1秒)以内に検出することが可能になった。結果として、マイクロ波検出を理論限界である1秒間測定基準1アトワット(100京分の1ワット)レベルに上げることができた。

イ・ギルホ教授は、「今回の研究は、次世代の量子素子を実際に実装するための基盤技術を構築したということに意味がある。この技術を活用すれば、量子コンピューティングの測定効率を最大化して、大規模な量子コンピュータの開発も可能になる」と話した。

今回の研究結果は、次世代量子情報技術の商用化のための源泉研究として認められ、2020年9月30日に国際学術誌「ネイチャー(Nature)」に掲載された。

サムスン電子は、2017年6月からイ・ギルホ教授の研究チームの開発を支援している。サムスンでは、未来技術育成事業として他の案件も含めると2013年から1.5兆ウォンを研究支援に充ててる。これまでに603件の研究課題に対して7,729億ウォンを投入した。国際学術誌には合計1,255件の論文が掲載された。ネイチャー(4件)やサイエンス(5件)などトップレベルの国際学術誌に掲載された論文は101件に達している。

(文/コリアコリア編集部、写真/サムスン電子広報資料より)

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